第一回 Intel VS AMD

さて、不定期連載一回目である。(いつまで続くかわかりませんが)

今回のお題はAthlonの登場で鼻息の荒いAMDと
最新チップセットの出荷でつまずいたIntelで始めようと思う。

まずは最近、何かと批判の対象にされるIntelから話を進めたいと思う。

最初にIntelが現在に至るまでに果たした役割を簡単だがまとめてみたい。
最近PCを使い始めた人の為にさらっと書いてみる、別にIntelの肩を持つ気は無いが
現在のAT互換機はIntelとMicrosoftとCOMPAQ抜きでは存続し得なかった。

本家であるIBMのPC-ATが消えた後もこれらのメーカーとPHOENIXのような互換BIOSメーカーの
存在で曲がりなりにもAT互換機が生き残った事はよく知られている事実である。
IBMがPSシリーズに移行した後もATの需要が有った事も大いに影響した。
(PSシリーズはATと異なり細部の仕様は一切公開される事が無かった為に互換機が
作れなかった、そこでATの仕様を引き継ぐ形で互換機は独自に進化していった)

心臓部であるCPUは80386から80486へ移行しても上位互換であり続けたし
それらのCPUの機能を活用する為のOSはマイクロソフトが提供し
エンドユーザーへはCOMPAQがPCとして提供するとゆう形態である。
(当時、本家のIBMは80286にこだわり続け80386の採用はなかった、そこをつく形で
COMPAQが80386搭載機をデビューさせたのだ。)
ただ80486時代までは規格の乱立でエンドユーザーには厄介な時代だった。
具体的に問題を抱えていたのは、拡張バスとI/O廻りである。
現在ではすっかり無くなってしまったが当時は32BITの拡張バスだけでも3種類有ったのだ。
IBMはPSシリーズでMCA(マイクロチャネルアーキテクチャ)バスを採用したが高価なカードしか利用できなかった。
DECなどはEISA(イーアイサ)バスを採用したがこれも非常に高価なカードしか利用できなかった。
VESAが規格化したVL(VESA−Local)バスに至っては安価では有るが安定しないカードしか利用できず、
結果的にグラフィックカードでの利用に留まった。
この状況にピリオドを打ったのがIntelの提唱したPCIバスだった。
今日に至るまでAT時代から続く遺産としてISAバスが続く以外は、PCIバスで統一された事で
カードを製造するメーカーも利用する我々も規格の不安を気にする事はない。
規格を取りまとめてリードしたIntelの功績であると私は思う。

同じ事はI/O廻りでも起きた、チップセットの登場により利便性が上がったのだ。
それ以前はマルチI/Oカードを利用しなければAT互換機にはロクにインターフェースが無く
ユーザーがそれらをカードで追加するしかなかった。
チップセットがこれらの機能を内包することでこれらの不自由も過去の物になったのだ。
異論は有るだろうが、これもIntelの功績と考えてよいと思う。

Intel嫌いの人には不愉快だろうが規格を統一するには力を持ったメーカーが
ある程度強引にリードしなくては何も決まらないのではないか?
以前よく見かけた何とかコンソシアム等が結局何も生み出せなかったのは何故なのか?
仲良しクラブでは駄目だとゆう事ではないのか。

Intelにしても常に順風満帆で今日に至ったわけではなくPentiumの登場時には
CISCの時代は終わりこれからはRISC(同時期にデビューしたPowerPCなど)の時代だと
雑誌などでも散々書かれた時期もあった。
現在の状況を見ればわかるが、それは杞憂に終わり相変わらずX86は続いている。
Intelが決して諦めずユーザー離れを食い止める為に尽力した事と
MicrosoftのWindowsが使えるGUI-OSとして普及期に入って来た事が大きかった。
COMPAQ以外にもDELLやGATEWAYが伸びて来たのもこの時期である。

逆に言えばこの時PowerPC連合(IBM、Apple、Motorola)にはIntelにダメージを与える
絶好の機会であったのにそれが出来なかった、そればかりではなくこの連合はその後瓦解する。
同床異夢だったのかどうかはわからないが、Intelはこの後PentiumProを発表し、
現在まで続くP6アーキテクチャーで一段と市場の独占を強めることが出来た。
逆に言えばPCの市場にはIntel以外の選択肢を提供できるところが無かったのだ。
(他にもMIPS、ALPHAなどのCPUが有り、OSもUNIXが複数種有ったのだがPC市場を軽視していたのか
結局Intel以外にはAppleしかPC市場に積極的に乗り込んで来なかった)

現在我々が使っているPCを見ればわかるがATX規格、USB、PC100Memory、AGPなど
Intelだからこそ集約し規格を統一できた物は多い。
規格に従った製品を作りさえすれば世界中の競合メーカーと同じ土俵で勝負が出来、
ユーザーも様々なパーツを任意に組み合わせて作ることが出来る。
DVDを見ればわかるが圧倒的な求心力を持つメーカーが無い故に各社各様の思惑が先行して
DVD-ROM以外は何も決まらないのに比べると、PCは独自仕様を極力排除したおかげで
自作する事が非常に容易になっている。

規格が各社各様であったら決して今日の様な形態のショップブランドPCは無かっただろう。

以上(これだけでは無いが)IntelがPCの世界で果たした役割は非常に大きな物だった。

がしかしである、だからと言ってIntelの行動が全て結果オーライかと言えるのかどうか?
確かにIntelはすごい企業である、過去を振り返ってみればそのすごさが実感できる。
過去十年間に渡って売上高は伸び続けている(91年に48億ドルだったが98年は263億ドルである)。
数字の内訳で驚くのは純利益を98年度でも61億ドルを確保している点や売上高営業利益率も同年で
31.9%も確保し、粗利益率に至っては50%前後で推移している点である。
しかもこれだけの収益をプロセッサー事業中心で叩き出しているのだから凄まじい。
これだけ潤沢な資金があれば何でもやりたい放題である。
下に続くAMDとの問題もこれらの圧倒的な市場に対する影響力を行使すれば思うが侭であろうが
王者Intelには是非王者としての品格を保って頂きたい物だ。
ビジネスなので甘っちょろい考えを持って当たる事は当然タブーではあるが、行きすぎれば反発を買い、
決してIntel自身の為にもならない。ショップとしても、優秀なプロセッサーにはやはり優秀なプロセッサーで
巻き返しを図って欲しいと願って止まないし、常に業界の灯台として輝いていて欲しい。
敗れ去ったCYRIXやIDTが目標としていた様に。
(上記のIntelに関する数字は全て11/3付けの日刊工業新聞より引用させて頂きました。)


さてAMDである、AMDファンの方には申し訳無いが少々辛口の見解になってしまう。

AMDに付いては多く語ることは必要無いかもしれないが、現在に至るまで史上最強のX86互換メーカーであった。
過去形で書いたのはAthlonは互換CPUではなく全く新規なX86プロセッサーであるからだ。
それ故に新たな問題を抱えてしまっている様なのでその事に付いて書いてみたいと思う。

まずK6シリーズまでのAMDはCYRIXやIDTと並んで非常に手を付け易い手法で
市場に製品を送り出してきた。
既に存在するハードウェアを利用しIntelのCPUをリプレースする手法である。
しかしライバルのIntelはSlot1でその先を行っており従来の手法では
ユーザーに対する訴求力に陰りが見えていたのは明らかだった。
特許や裁判での約束もありSocket7以降のCPUを作る事が出来ないAMDが
AthlonでSlotAを作り出した事はひとつの成果だと思うし、実際Athlonは同クロックの
IntelCPUよりも殆どの点で、処理が早い点は賞賛に値する。
その結果マザーボードはオリジナルを要求する点も従来には無かった手法だ。

しかしSocket7での反省は完全には生かされなかったようだ。

まず、メーカー規模の違いを言ってしまえばそれまでだが、対応マザーが少なかった。
また最初のマザーはコールドスタートでの問題が発生する場合があり回収騒ぎも有った。
電源も推奨品があり、低電圧、大電流を要求する扱いの難しい(Intelと比較して)CPUとして登場してしまったからだ。
現在はCPUコアの改良もあり登場時ほどのシビアさでは無いようだが可能ならばそうなってから出荷してほしかった。
K6シリーズでも出荷直前の仕様変更(電圧)や途中で95MHZのようなクロック製品の追加で
ユーザーもメーカーも振り回したAMDである、またかと思った人も少なからずいる。
現在でも従来のK6−2からK6−3にリプレースするには対応マザーである必要があるがユーザーに認識されておらず
アップグレードしたい段階になって始めて対応マザーが必要である事が判明する事例も多い。
これもK6−2に比較してK6−3が予想以上に電力消費した為に起こった問題である。
だからこそ、自らの手際の悪さでユーザーに悪い印象を与えるのは避けて欲しかったのだ。
現在ではその辺りも落ち着いたと思うので後はAthlon次第である。
次世代Athlonが現状のマザーでも使える事をユーザーに確約出来る様努力して欲しい。

さて、問題は他で持ち上がった物だ。
台湾のAthlonマザーボードベンダーがIntelの圧力に屈し生産計画を止めるかも知れない、
いや実際に白紙になったと伝わっている噂である。

噂に付いては検証できるつても無いので、仮に真実だとしよう。
はっきり言ってしまえばこんな事態はマザーボードの互換性を捨てた時点で予測された事であり
私の個人的な感覚では有るが、何を今更とゆう気がする。
AMD(決して愚かでは無いと思うので)がこういった事態を全く予想していなかった(そんな事は有り得ない
と思うが)としたらオメデタイと言うしかない。

AMDが本気でIntelに喧嘩を売ったのならばこれは実弾が飛び交わないだけで戦争と同じだ。
兵站が尽きたら終わりではあまりに情けない戦争だ。
当然自社の配下にマザーボードメーカーを従えてから戦争を仕掛けるのが常道ではないか。
(実際に手をうっていると思うし、自社のマザーも外販されないが存在する)

情緒的な日本人の判官贔屓で語るのはこの場合あまり意味が無い。
(本人達も(私も含めて)意識していないが、近所の昔からの商店街が有るのに現実の生活では離れた大型店に
安い商品を買いに行くのと同じである、同情されてもお店をやって行けなければ潰れるしかない。
しかしその様な商店街が寂れてくると、私達は嘆くのだから勝手なものである。
私が安易な同情論を嫌う理由はこれである、まさに同情するなら買って欲しいし、売れなければ意味が無い)

ここまで呼んで下さっている方なら記憶に有る事だと思うが、わが国でもホームビデオの
普及期に覇権を争って同様の問題が起こった。VHSとβの規格争いである。
この時も物量作戦を仕掛けるVHS陣営に対してβ陣営に同情が寄せられた。
事実、その時点で技術的な優位性はβにありVHSは技術的には劣っていたのだ。
結果はVHS陣営の勝利に終わった。

ここから導き出された教訓は技術的に優秀な物がいつも勝つわけでは無い事である。
共栄ジムの故金平会長の言葉であるが

"アマチュアは強い者が勝つ、しかしプロは勝った者が強いのだ"

IntelもAMDもこれを飯の種にしている以上、当然プロだ。
勝つためには己の持てる力を尽くして相手を倒す努力をするのは当然であろう。

日本の自動車メーカーを例に取るが、自社の仕事を廻している企業に対して
自社ブランドの車を社員の通勤車両に強要するあれである。
同じ様な例はそこここで起きている。

また上記の噂は台湾のベンダーを非常に馬鹿にした話でもある。
台湾の人間が圧力に屈する様な人々で無い事は私も良く知っている。
(噂が真実だとすれば、かなりのプレッシャーが掛かっているのかもしれない。)
商売である以上AMDと組む事で自社の利益に適うならば生産は続けるはずだ。
現状ではメリットよりもデメリットの方が多いと判断すれば止めるのもやむを得ない。
AMDが自社の技術の優位性を誇示し商売に結び付けるには不利な立場を自覚し
自社でマザーも作って販売し、実績を重ねて周囲に認知させる方法が一番であろう。
チップセットも自社製品で存在するのだから、ここは外部調達では無く自社で賄って欲しい。
実績が上がれば気骨有るベンダーであれば参入するはずだ。
(外部からのプレッシャーを快く思う人など誰もいない)


思い出して欲しい事がある、EPSONがNECの98互換機市場に参入した頃を
NECは激怒し、ありとあらゆる嫌がらせを行ったし訴訟もあった。
しかしここからがEPSONの本領発揮だったのだ。
彼らは互換性の完全さを実証する為に動作検証を自社で徹底的に行い
動作確認済みのソフト、ハードを本にして定期的に更新し配布していた。
見ればわかるが良くここまでチェックしたものだと思うぐらい多岐に渡っている。
今でも手元にあるが、その気の遠くなるような作業に感銘を受けて
EPSON互換機のユーザーに私はなったものである。(もちろん互換性に対する安心感にもひかれた)
しかもEPSONはいつでもNECの同等機よりも安価であった。
EPSONはなるべくして国民機メーカーとしての立場を確立した。
決して座して選ばれるのを待っていた訳ではないのだ。

最近Intel市場の独占とその手法について批判が繰り返されているが、Intelにしてみれば
AT互換機市場をここまで育てて来たのは自分たちであるとゆう自負は当然あるに違いない。
その彼等のプライドを相当逆撫でしたのだろう。
(新しいCoppermineと比較してもAthlonの方が処理速度は高速である)

他にも問題はある、Slot1では容易に実現できるデュアルプロセッサーだ。
来年早々にWindows2000が発売されれば、今以上にデュアル化に対する要求は
高まってくるのは確実だから、この分野でこそ手際良く間に合わせて欲しい。
オリジナルのHALを開発しなくてはならないし、チップセットも用意しなくてはならないが
大いなるチャンスでも有る。個人的にも是非ともAthlon-デュアルを使ってみたい。
(低電圧、大電流でデュアルは厳しいと思うが)
駄目な物には何も期待しない、優秀さを認めるからこそ要求の水準は高くなってしまうが
私以外にも同じ事を思っている人は多い。

最後になるがAMDには今一層奮起して方位網を破って欲しい。
そして確固たる地位を確立して欲しいのだ。
プロセッサーの低価格化に寄与したメーカーとして記憶されるだけなのかどうか今後のAMD次第なのだ。


支離滅裂で稚拙な文章に最後まで付き合って下さった皆さん、どうもありがとう。